いま日本中の桜が病気になっていることをご存知でしょうか。あちこちで桜を守ろ うという動きが出てきていますが、桜保全の活動はまだ十分とはいえません。このま ま見すごせば、桜が枯れてしまうだけでなく、環境維持や美化にも悪影響を及ぼしか ねません。 万人の愛する桜だからこそ、日本中の桜を元気にしたい。そんな想いから、私は桜 の魅力を語りつづけてきました。そして、地道ながらも、保全活動をつづけることが、 明日への環境教育にも繋がると信じて実践しております。 また、桜を暮らしの中でもっと身近に楽しんでいただくために、桜の食べ方や遊び 方などを幅ひろく提案しています。 。

桜の現状について

山形県 ある町の 天然記念物桜の例
樹齢:約 800年 品種:エドヒガンザクラ

1990年代の樹形


2005年代の樹形


2009年代の樹形


 写真を1990年から2009年まで、見比べてください。年々樹形は哀れな姿になりました。2005年の写真は、台風の被害で、真ん中に高くせり出した枝が折れました。そして2009年の写真をみると、その前の年に落雷で枝が折れた様子が見て取れます。この樹形の変化は、その時々の天災被害の結果ではありますが、推定樹齢800年のこの桜にとっては、この20年間の環境変化により受けたダメージは相当に大きいことが分かります。
 このようなさくらは特別ではなく、日本中の桜が同様に聞き的な状況におかれています。考えられる基本的要因は、異常気象や環境悪化などですが、そうした“自然現象”だけでなく「人と桜との関係」の変化も見逃せません。
 そもそもこの桜は地元の共有財産でした。県指定の天然記念物に認定された桜は、町野名物となって重要な観光収入源となりました。もう地元の人は桜の樹に触れることさへ許されなくなり、すべてがマニュアルに従わねばならなくなりました。今まで天災があっても、地域の人々の手厚い保護があったお蔭で、生きてこられた桜は、その守り手から遠ざけられてしまいました。
 人と桜の最も大きな関係、お花見。その花見も嗜好が変化しています。田舎の片隅でぽつんと咲く一本桜や古木の桜を探す旅が流行るようになりました。桜を追いかけて南から北へ旅する人が増え、デジタルカメラの普及やインターネットで地方の桜情報が氾濫するようになると、、たとえ山奥や交通の不便な過疎の村でも人が押し寄せるようになりました。  この写真の桜のある小さな町でも、観光資源として桜を売り出していきました。地元の人だけが花見をしていたころには、桜は痛まなかったものの、短期間に人が押し寄せ、桜の根元のつちを踏み固めた結果、すっかり弱ってしまいました。桜の根は地面から5cm程度の地中に張るので、地面が踏み固められると、根から呼吸ができなくなり弱ってしまいます。さらにエチケットの無い人、ライトアップなど、桜を取り巻く状況はさらに悪化します。
 既に桜は指標植物としての役割を終えました。かつて桜の開花で田植えの時期が示され、花見は農作業前の懇親会的役割を果たしていました。今では田植えなどは、気象データを用いるために、桜の開花はあてにされません。かつて田植えは地域の共同作業でした。それが現在は機械化が進み、個人的な作業となりました。村から若者がいなくなり、地域の交流も次第に減って、青々とした田園風景を保つことは容易でなくなりました。
 このような事情を抱えている地域で、このような枝が折れた桜で、今後集客が果たせるでしょうか。この現状から、桜を守るために地元では保存会が起ち上がりましたが、過疎化の進む地域の状況を考えると、保存会事態の維持もまた大変だろうと思います。  5年くらい前からこの地域を訪れています。今までにない桜との関わり方をご提案できたらよいと願っております。

桜の現状 その他の例

 北は北海道から南は沖縄まで、日本の桜は傷んでいます。  
治療さえすれば、快復してよりきれいな花を咲かすこともできます。しかし、まず桜が病気だと気づく人は少ないのです。気付いても経費や時間のかかることですから、治療を施すまでにはいきません。そうして、年々、傷んだ桜がより悪化していくのです。


 
北海道函館市の傷んだ桜
 
沖縄県本部町の傷んだ桜

桜の工房アトリエさくら代表
岡村比都美